釣り用ライフジャケット(PFD)の選び方と法律的着用義務

2018/06/21

ライフジャケットを初めて購入する場合、分からないことだらけで色々と思案します。

素材別などでの性能は勿論のこと、法律に関しても疑問を抱く人は少なからずいるはず!ということで、ライフジャケットについて非法律家なりに調べるうちに分かったことを共有したいと思います。

この記事の要点
  • ライフジャケットの選び方
  • ライフジャケットとPFDの違い
  • 法律的に、釣り船でのライフジャケット着用義務はあるのか?

これらについてまとめます。
これさえ押さえておけば、あとは心置きなく好きなライフジャケットが選べるぜ!

自己救命策の基本

海上保安庁の調査によると、2007年におけるライフジャケット未着用者の釣り人の死亡率は着用者の1.5倍ですが、2001年から2005年までの船舶等における全体の死亡率は5倍も差があります

釣り中のライフジャケットの着用・未着用での生存率の違い(2007年)
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海上保安レポート
漁船・プレジャーボート等の小型船舶における海中転落者のライフジャケット着用・未着用別の生存率(2001-2005年)
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国土交通省海事局

それから、意外と気にしていない人が多いのが連絡手段の確保です。

いくら落水時にライフジャケットで助かったとしても、助けを呼ぶ手段がなければ元も子もありません

釣り仲間と複数人で釣りに行ったとしても、磯だと仲間が落ちても岩影で見えないことも考えられるので、やはり通信手段は必須です。

過去に私の知人の釣り仲間も磯釣りに出掛けて海に流されて亡くなっています。絶対に水難事故を侮ってはいけません

自己救命策の3つの基本/ 海上保安レポート
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  • ライフジャケットの常時着用
  • 防水パック入り携帯電話等、連絡手段の確保
  • 海上保安庁への緊急通報用電話番号
    118
    番の活用

釣り船でのライフジャケット着用は法的義務なのか?

これ、疑問に思う人がいるのでは?少なくとも私はそうだったんです。

結論から言えば、どんな規模の船であろうとも、陸から何海里離れていようとも、ライフジャケット着用の法的義務はありません。(後述

行政的にも着用に努めて下さいと言っています。つまり言い換えると、義務ではないが、出来れば着用した方が望ましいというスタンスです。

磯釣り、プレシャーボートでの遊漁等の場合でも、できるだけライフジャケットの着用に努めて下さい

ライフジャケットの着用義務|浜田会場保安部

ただし、次のいずれかに該当する場合は着用義務があります。(記事公開時点)

  • 水上バイクに乗る場合
  • 12歳未満の子供の場合
  • 1人で乗船する場合

12歳以上なら、乗船にはライフジャケットの着用義務はありませんが、大半の渡船屋さんや釣り船は客に対して安全面からライフジャケット着用を義務付けます。

  • 持参してね、持ってないなら乗せないよ

  • 持ってないならタダで貸しますよ

  • 或いは有料で貸しますよ

対応の仕方は船長によって様々です。しかし、前述している通り法的拘束力はありません。

A,D,F,Gの4種類のタイプと乗れる船

これも結論から言うと全く関係ありません。あなたが好きに選んで買ったライフジャケットは、どんな海域でもどんな船でも着用して問題ありません

そもそも着用義務がないので、あなたのライフジャケットがどんなにちゃちだろうと船長から何か言われる筋合いはありません。

私は全く知らなかったので、タイプがFとかGだったら大きい船や遠出の船には乗せてもらえないんだろうか?と疑問に思ってたんです。

しかし、A,D,F,Gの4種類のタイプは船の管理者が船の法的備品として置いておかなければならないライフジャケットの種類を海域や航行時間で分類したものなので、あなたが持参したライフジャケットの性能が、船に積んでおかなければならない法的備品と同等以上の性能を有する必要はありません

あなたが着用するライフジャケットはどのタイプ?|国土交通省海事局

http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk6_000011.html

平水区域及び沿岸区域|日本小型船舶検査機構

http://www.jci.go.jp/areamap/heisuiengan.html

  • Q. ライフジャケットの着用義務があるのはどんな人?
  • Q. 国土交通省の型式承認マークがついているライフジャケットじゃなきゃだめ?

既に上記で説明済みではありますが、この2つの疑問についてずばり解説している画像があるので確認したい方は下のリンクへどうぞ。

ライフジャケットを着用しましょう(フローチャート式)|遊びコミュニケーション イシグロ

http://www.ishiguro-gr.com/fishing/fishing_shinan_format.php?id=57

条文を読み解く

上記の通り、本当に着用義務がないのか、条文を確認してみました。

ライフジャケット着用の指定と着用義務の是非については、船舶職員及び小型船舶操縦者法に記されています。要約すると、第23条の36第4項でこういう時は着せなさいとあり、船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則 第137条第1項1号から4号で具体的にこういう人に着せなさいとの記述があります。

ちなみに、船室内にいる場合は着用義務はありません。

第二十三条の三十六

4  小型船舶操縦者は、小型船舶に乗船している者が船外に転落するおそれがある場合として国土交通省令で定める場合には、船外への転落に備えるためにその者に救命胴衣を着用させることその他の国土交通省令で定める必要な措置を講じなければならない。

船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和二十六年四月十六日法律第百四十九号):平成二六年六月一三日法律第六九号(執筆時の最終改正日)
(船外への転落に備えた措置) 第百三十七条

法第二十三条の三十六第四項 の国土交通省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。

  • 一  航行中の特殊小型船舶に乗船している場合
  • 二  十二歳未満の小児が航行中の小型船舶に乗船している場合
  • 三  船外に転落した際に短時間で救助されるために適切な連絡手段を確保せずに、航行中の小型漁船に一人で乗船して漁ろうに従事している場合
  • 四  前各号に定めるもののほか、小型船舶の暴露甲板に乗船している場合
船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則(昭和二十六年十月十五日運輸省令第九十一号):平成二七年一二月一八日国土交通省令第八四号(執筆時の最終改正日)

私が気になったのは、第4号にある小型船舶の暴露甲板に乗船している場合です。

これは普通に読めば雨風に晒されるような甲板に乗船する人は移動中、停止中に関わらずライフジャケットを着なければならないと解釈できるので、船べりで釣りをする人には着用義務が発生しそうなものなんですが・・・どうなんでしょう?ということで更に調べました。

国土交通省HPでは総トン数20トン未満の小型船舶について次のように触れています。

小型船舶を使用した旅客運送事業に 関する救命胴衣の着用措置について

次の場合、小型船舶の船長は、旅客に対して次の措置をしてください。

  1. ライフジャケットを着用している旅客暴露甲板に乗船している場合は、救命 胴衣を着用させるよう努める。
  2. 12歳未満の小児は、船内にいる場合 を除き、常時救命胴衣を着用させる。
  3. 気象・海象の悪化し、安全確保のため 必要と判断される場合は、救命胴衣を着用させる。

ただし、手すりなど転落防止のための 適切な設備がある場合は、3の場合にのみ措置してください。
また、この措置については、運航管理規程の作業基準に 追加する必要があります。

ライフジャケット (救命胴衣)の着用について|国土交通省

つまり、暴露甲板での救命胴衣の着用を努めるに留めた上で、手摺り等の設置による落下防止措置が講じてある場合はその努力すら必要がないとの表現になっています。

ライフジャケットとPFDの違い

少し遠回りな話からしましょう。
救命胴衣は用途に応じて3種類に分類できます。

a.小型船舶用救命胴衣

頭部を水面上に出し、リラックスして浮いていることができる。

b.作業用救命衣

船上で作業する方のためのライフジャケットで、作業性を重視。

c.小型船舶用浮力補助具/2002年10月(平成14年10月)導入 

小型船舶用救命胴衣よりも要件を緩和し、着心地や機動性を重視。

更に、上記の用途別3種類とは別に、次の4種類のタイプに区分することが出来ます。安全性に配慮しているほどグレードが上です。(Aが一番上のグレード)

  • TYPE A
  • TYPE D
  • TYPE F
  • TYPE G

3つの用途と4つのタイプの関係性を一覧にすると、概ね次のようになります。

ライフジャケットの用途、タイプ、要件・規格一覧表
用途 タイプ 反射材 浮力 (kg)
a A 発見されやすい色 7.5以上
D
b F
c G 5.85以上
空欄は指定無し

で、本題に入りますと、日本におけるライフジャケットとPFDは、堅苦しい話を抜きにすれば同じモノです。
しかし、厳密に定義するなら次のようになるかと思います。

ライフジャケット

救命胴衣の意味。ライフベスト、フローティングベストとも言う。
もっぱら緊急時のための救命装備。上半身を全体的に覆ったり反射材が付いていたりと、水難時の体温維持や視認性を重視したもの。
使用時は着水しないことが前提、或いは一度きりの着水を前提とした救命胴衣。a.小型船舶用救命胴衣の意味合いが強い。

PFD

PFDとは、Personal Flotation Device の略称。直訳は救命胴衣でライフジャケットの1つに属するが、能力的にはb.作業用救命衣c.小型船舶用浮力補助具の意味合いが強い。

身動きがとりやすいように敢えて浮力を落としたり、脇周りの浮力材を減らしてスッキリさせるなどして着心地や機動性を重視したもの。
カヌー、カヤック、ラフティング(川下り)、水上バイクなどのウォータースポーツに見られるような、着水の繰り返しを前提とした救命胴衣。

特にカヤックなど着水を前提にしたウォータースポーツをしている人は、無駄に浮力が大きいと逆に動きにくかったり体の自由が利かなくなるので、これらを明確に分けたがるようです。

ライフジャケット(救命胴衣)のタイプ別分類|国土交通省海事局

http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk6_000011.html

しかし、国土交通省で法廷備品のライフジャケットとして認定されている浮力の強いもの(浮力7.5 kg以上)でも、PFDと銘打っている商品もあるので、厳密な境界線はないと言えます。

膨脹式と浮力材式のどちらを買うべきか、メリット・デメリット

魚釣りを目的としてライフジャケットを買う時にまず悩むのが、膨張式・浮力材式のどちらにするべきかという事です。

それぞれにメリット・デメリットがあります。

もし、釣り以外に使う予定がなく、沖・堤防・ボートなどのオープンフィールドのみの使用が前提なら膨脹式でも構いません。

しかし、釣り以外にも使うなら浮力材式にすべきです。その大きな理由は次の4点です。

  • 膨張式は、いざという時に膨らむ・機能するという絶対な保証がどこにもない
  • 膨張式はボンベの交換で維持費が発生する
  • 浮力材式なら比較的雑に扱える
  • 浮力材式ならマリンレジャーにも使える、メンテナンスが楽、維持費が掛からない

膨脹式

膨脹式

折り畳んだ気室と炭酸ガス(二酸化炭素)のボンベがセットになった救命胴衣で、必要な時だけ救命衣気室にガスを注入して膨らませて浮力を生み出す方式。一度膨らませると、気室部分はガスを抜いて何度も使いまわせるが、ボンベはその都度 新品(2000円~3000円/1本)と交換する必要がある。

自動膨脹式

着水時、落水時に水を感知して自動的に膨らむ方式。

手動膨脹式

自分で紐を引っ張ることで膨らませる方式。

メリット
  • コンパクト
  • 動きやすい
  • オシャレ
  • 夏は涼しい
デメリット
  • 1度膨脹したら別売りのボンベと取り替える必要があるので、維持費がかかる
  • 経年劣化もあるので膨脹せずとも1年~2年で交換する必要がある
  • 自動膨脹式は水洗いや雨などの水気に神経を使う
  • 手動膨脹式の場合、もし気絶してたら膨脹させられない
  • 浮力材タイプとは違い、着水時に水面で仰向けに浮きやすいので身動きがとりにくい
  • 気室(膨張性浮袋)は傷に弱いので岩や貝などで破裂する恐れがあり、磯場では役に立たない
  • 津波などの災害時も、漂流物でパンクするので役に立たない

浮力材式のメリット・デメリット

浮力材式

内部に発泡素材を詰め込んであるベスト型のライフジャケット。膨張式とは異なり、常に浮力効果を発揮する。

メリット
  • ポケットのある製品が多いので、防水パックに入れた携帯電話やペンチなどの小物が入れられる(落水時に携帯電話を持っているかどうかはとても重要)
  • 釣り以外のマリンレジャーでも使えるので汎用性が高い
  • 膨脹式とは違い、落水しても釣行を続行できる(季節や服装にもよるけど)
  • 冬は防寒にも役立つ
デメリット
  • ダサイ商品が多い
  • 夏は暑いし蒸れる
  • 嵩張る
  • 動きにくい(シャクった時にグリップエンドが引っ掛かったりする)

で、釣りで使うことを前提にすれば、浮力材式でオススメなのはアングラーズリパブリックのゲームベストです。

このゲームベストの何がいいかというと、肩で着るのではなくて腰で着ることです。

クロロプレーンウエストベルトを使って腰で固定することで、肩の部分に負荷が掛からなくなるので、キャストする際に抵抗がなくなります。しかもホールド感が向上するので、ポケットに重い荷物を詰め込んでいても着崩れしにくくなります。