天然トラフグの捌き方とフグ毒の基本知識
立派な天然トラフグの解体動画があまりに見事だったのでご紹介します。
それから、フグにまつわる色々なお話も。
フグを自宅で調理することは食品衛生法などで法律違反なのか
これ、気になる人が結構いるんじゃないでしょうか。
トラフグなどが持つテトロドトキシンやハコフグが持つパフトキシンなど、フグの内臓などには毒が含まれ、その毒性はシアン化カリウム(青酸カリ)の1000倍とも言われており、多くの自治体では初期処理には専門の資格者が当たることが義務付けられています。(ふぐ調理師やふぐ取扱登録者など資格の名称は各自治体によって異なる)
また、処理施設として保健所への届け出が必要なほか、ふぐの内蔵の廃棄処理方法についても各自治体で決まりがあります。
では、釣り人が釣ったフグを自宅で初期処理を施し、個人的に調理して喫食することは法律違反なのか、またその内臓処理は・・・?
ということで色々調べたものの、結論から言いますと「○○法の第何条に抵触する」といった内容は見つけることが出来ませんでした。
食品衛生法第6条第1項第2号には次のようにあります。
食品衛生法 食品衛生法第六条第一項第二号(昭和二十二年十二月二十四日法律第二百三十三号) (最終改正:平成二六年六月一三日法律第六九号) 第六条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。 二 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
また、ふぐ調理師に関する条例では毒性部位の廃棄処理方法について行政毎に詳細に定められていますが、家庭での処理方法については、少なくとも食品衛生法ではどこにも記述は見られませんでした。
要は、「販売目的ではアウト」っていう表現のみで、各行政のホームページでも「素人の自家調理は危険です!」みたいなことしか書かれていません。
無闇に「違法ではない」と言ってしまうと、調理する人が現れて被害が増える恐れがあるため、脅し文句であえて濁しているように見えます。
とはいえ、自分だけで勝手に逝くならまだしも、家族や知人を過失致死に巻き込むほか、それによって過失致死傷罪(執筆時は親告罪)等に問われる可能性もありますからね・・・。
フグ調理士の資格を持つ板前でさえ、客にせがまれて渋々出した肝で死んだ事件では有罪判決が出ています。(八代目坂東三津五郎|フグで中毒死した著名人|Wikipedia)
何がなんでも自分で捌きたいというのであれば、自分しか食べない・自己責任でやるしかないでしょう。
これについては、下記リンクのブログの内容が非常に面白くて説得力がありました。
http://kodokunogibier.blog.fc2.com/blog-entry-223.html?sp
ふぐ調理師によるフグの捌き方(動画)
でも実際に河豚がどんな風に処理されるのか気になりますよね!?(気になってくれないと話が進められない)
長崎県平戸市にある囲炉裏料理エビス亭さんがその動画をyoutubeに公開していました。しかも特大の天然トラフグです。
囲炉裏料理エビス亭
http://hirado-ebisutei.com/
親方の隠し部屋
http://hirado-ebisu.jugem.jp/
動画では、次の料理が作られています。
- ふぐ皮湯引きぽん酢
- 薄造り(てっさ)
- ふぐのぶつ切り
- 天ぷら
- 囲炉裏で炭火焼き
- ふぐ鍋(てっちり)
- 左右の胸鰭を結んだ線の位置で中骨を切断
- 胴側と頭側を神経締め
- 血抜き、水洗い
- 卵巣(マコ)を含む内蔵除去
- 腹ビレ、背ビレ、胸ビレを切断
- クチバシ周りの皮に切れ込みを入れて皮を剥ぐ
- 頭部外して心臓とエラを除去
- 両側にある隠しキモと横隔膜を除去(羽衣の完成)
- クチバシを割る
- 頭部を割って髄を除去して洗浄する
- 尾ビレを切り取る
- うぐいす骨を取る
- 胴体の血を洗い流す
- 鮫皮をひく
- 皮(鉄皮)を湯引きして氷じめにする
ふぐのさばき!ふぐも驚き!あっ!と言う間の早業、名人に乾杯♪
上の動画に比べると、大将の天然トラフグの解体が遅いと感じる人もいるようですが、youtubeでの同業の人のコメントによると次のようなフォローが入っています。
- 天然モノと養殖モノでは捌く際の難しさが段違い(皮や骨の硬さ、身のネバリ、脂の付き方)
- 天然モノは包丁を入れる角度を少し間違えると力任せでは中々割ない
- 養殖モノのトラフグには毒は無いので少々雑に扱っても大丈夫だが天然ふぐはそうはいかない
- 解説しながらなので手際が遅くても当然
ふぐの毒性について
フグの衛生確保について(局長通知)(S58.12.2)2|最終改正(平成22年9月10日消食表第326号)|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/kanshi/s58_1202-2.html
ふぐ毒とは、ふぐの食べるエサに含まれている微量な毒が分解・排出せずに蓄積されたもの。
本来のフグは無毒の魚であり、毒蛇が体内で自ら生成している様な毒とは異なります。(これを"本来"と表現していいのか別として)
そのため、エサを管理している養殖フグにはほぼ毒は無いとされています。
養殖にも次の2種類があり、陸河豚には理論上全く毒が無いということになっているみたいですが、食品衛生法上はまだ販売が認められていないようです。
- 海の生け簀でエサを管理して飼育する養殖河豚
- 陸上の水槽で水質もエサも完全に管理して飼育する陸河豚
ふぐの血液にも毒は有るのか
ふぐの毒は次の順で多いとされています。
- 卵巣
- 肝臓
- 隠し肝(隠れキモ)
では血液には毒はあるの?
例えば、筋肉も含め魚体全てに毒性を持つために食用ではないセンニンフグであれば眼球にさえ毒は含まれていますが、一般的に食用にされているトラフグ、アカメフグ、ヒガンフグの眼球や血液は無毒であるとされています。
また、仮にセンニンフグのケースであれば眼球には6 MU/gの毒が含まれていますが基準値(10 MU/g)未満であり、目玉だけを食して死に至るには250個-1600個(500 gから3.2 kg)、平均的には800個(1.6 kg)以上の目玉を食べる必要がある計算になります。
・・・頑張って食べても10個くらいで気持ち悪くなりそう。
計算根拠は以下の通り。
体重20 gのマウスの30分での致死量 = 1 MU/g 人間の致死量 = 3000-20000 MU/g 基準値 = 10 MU/g センニンフグの眼球の毒 = 6 MU/g センニンフグの眼球の重さ = 2 g 3000/6/2 = 250 20000/6/2 = 1666.666...
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ショウサイフグのヒレ酒は
食用提供禁止です。