イシモチ、グチ、シログチ、ニベの違い

2019/10/07

「グチ、ニベ、シログチ、イシモチ」、これらの名前で色々混乱したことがあるので整理してみたいと思います。

結論

まず大きな結論。

  • ニベ→グチと呼ぶ
  • グチ≠シログチ(ここ注意!)
  • シログチ→ニベと呼ぶ

ここでグチ=シログチだと勘違いしていると、無限ループに陥ります。一部地域(徳島県徳島市や愛媛県西条市など)ではシログチをグチと呼ぶこともありますが、便宜上ここでは無視します。そうじゃないと説明がつかなくなるので。

  • グチ(ニベやオオニベなどグウグウ鳴くニベ科ニベ属の俗称)
  • ニベ(和名、関東でのシログチの俗称
  • シログチ(和名、グチの一種、昔のイシモチのこと)
  • イシモチ(俗称、シログチの現在の俗称、シログチの昔の和名)

もう少し言い換えるとこうです。

  • 関東ではシログチ(和名)のことをニベ(俗称)やイシモチ(俗称)と呼ぶ。(でもグチとは呼ばない)
  • ニベ(和名)をグチ(俗称)と呼ぶ。
  • つまり、グチという種は存在しない。
  • でもシログチやキグチという種は存在する。
  • シログチは関西でもイシモチと呼ばれる。
  • キグチにはキングチ、コイチという俗称もある。
  • でもそれとは別に正統なコイチ(和名)も存在する。

どれもとてもよく似ているので、昔は同定(種を特定すること)が難しかったからこんなに複雑になったのではないでしょうか?(知らんけど)

以下では、各種の詳細や違いをまとめます。一番最後に一覧表を載せます。

ニベ

ニベ=グチです。

ニベ

ホンニベ、ニベ、オオニベなど、ニベ科ニベ属の魚の総称。あるいはニベという種を指す。俗称はグチ

体の側面には、背びれに向かって斜めに規則正しく並ぶ小黒色斑点列が見られる。エラ蓋にはシログチのような黒い模様は無い。

つまり、グチ=なにか特定の品種がいるわけでは無い。俗称としてはニベやオオニベ=グチ、シログチ=イチモチというように使い分けられていますが、混同して全てがグチという1種類の魚だと思って誤用している人もいます。こういう人は間違っている自覚がなく堂々と言い張るので妙な説得力を持つというのも、誤用や混乱の拡散に繋がっているような気がします。

ニベとイシモチの違い

これがちょっとややこしい。

ニベ

(前出ですが)ニベやオオニベなど、ニベ科ニベ属の総称。またはニベという種を指す。俗称は「グチ」。

イシモチ

シログチの俗称。なのでシログチ=イシモチ。ただし、関東ではシログチのことを「ニベ」や「イシモチ」と呼ぶこともある。関西でもシログチをイシモチと呼ぶ人もいる。

  • ニベ→グチと呼ぶ
  • グチ≠シログチ(ここ注意!)
  • シログチ→ニベと呼ぶ

ここでグチ=シログチだと勘違いしている人が、無限ループに陥るんだと思います。

「ニベもない」の語源

ニベもない(膠もない、鮸膠も無い)

「愛想がない」、「そっけない」の意味。昔は魚の胃袋を「へ」と呼び、ニベの胃袋で作った膠(にかわ:昔の天然接着剤)は粘着性が強かった。「煮た」「へ」で膠作ったことからニベと呼ばれる。

膠(にかわ)

動物の皮膚、骨、腱などに含まれるコラーゲンに熱を加え抽出したゼラチンを主成分とする天然接着剤。

グチ

グチ

炭酸カルシウムで出来た大きな耳石を頭部に持つニベ科の魚の総称。シログチ、キグチ、ニベ、オオニベ、ホンニベなどの俗称。由来は、釣った時に「グウグウ」と鳴いてる様子が愚痴を言っているように聞こえるから。つまり、グチという種の魚がいるわけではない

シログチ

シログチ=イシモチです。

シログチ

ニベ科シログチ属の魚。
エラ蓋の先端に大きくぼんやりとした黒丸の模様がある。一般的には、シログチは、関東では俗称としてニベやイシモチと呼ぶ。(ニベという別種が存在するのに、これをニベと呼んだりするから皆が混乱するんだと思う。)1950年代まではイシモチが標準和名だった。一部地域(徳島県徳島市や愛媛県西条市など)ではグチと呼ぶ。

高級かまぼこの材料。

名前を見るとシログチ=グチの一種だと思うが、シログチはシログチ属、ニベ(グチ)はニベ属でそれぞれ属が違う。
学名はPennahia argentata ( Houttuyn,1782 )。シログチにはArgyrosomus argentatusという学名もあるが、これはシノニム。

シノニム(Synonyms)

同義語のこと。本来、ある生物の学名は1つしか存在しないが、2つ存在する場合があり、これをシノニムと呼ぶ。

例えば、新種を発見してAという学名を付けたとする。その後、再び新種を見つけてBという学名を付けたが、実はAとBは同じ種だったという場合、AはB(BはA)のシノニムという。命名規約や分類学上の見解にもよるが、原則としては先に名付けた学名が優先される。

ネットで調べていると同じ魚なのに違う学名が出てくる場合があるが、これはシノニムの場合が多い。

キグチ

キグチ

学名はPseudosciaena polyactis。
韓国ではチョグ(조기)と呼ばれ、韓国料理や神事でも使われる高級魚で、1尾5000円にもなる。神事ではクルビ(チョグを塩漬けにして干したもの)を使う。中国では小黄鱼(シアオフアンユイ)と呼ばれる。

グチとイシモチの違い

グチ≠イシモチです。ですが、シログチ=イシモチです。

イシモチ

イシモチとは、本来は頭部に大きな耳石を持っている魚の総称だが、一般的にはイシモチ=シログチを指す。

グチ

前述したが、グチ=グウグウ鳴くニベ科の総称。

シログチ(=イシモチ)もグウグウ鳴くのでグチと呼べるはずですが、グチとは呼ばず、イチモチと呼ぶのが一般的です。

一覧表

和名 俗称 英名 中国名 中国の俗称 学名
ニベ科 ニベ属 ニベ(鮸) グチ Nibe croaker, blue drum 箕作黄姑鱼 Nibea mitsukurii
ニベ科 ニベ属 オオニベ グチ Jp’s croacker 大白姑鱼(大鮸鱼) 大鮸鱼 Argyrosomus japonicus (Synonym: Nibea japonica)
ニベ科 ニベ属 コイチ(黄姑魚、古伊知魚) White flower croaker, yellow drum 黄姑鱼 梦鱼,铜梦鱼 Nibea albiflora
ニベ科 ホンニベ属 ホンニベ グチ Mi-iuy croaker 鮸鱼 敏子,敏鱼 Miichthys miiuy
ニベ科 シログチ属 シログチ ニベ、イシモチ(石持) White croaker, Silver croaker, Silver jewfish 银姑鱼,白姑魚(白米鱼,鰃仔鱼,白梅,白姑子,白口鱼,沙卫口,白米子) 白米鱼,鰃仔鱼,白梅,白姑子,白口鱼,沙卫口,白米子 Pennahia argentata (synonym: Argyrosomus argentatus)
ニベ科 コニベ属 キグチ(金石魚) キングチ redlip croaker 小黄鱼 黄花鱼,小鲜 Larimichthys polyactis
ニベ科 コニベ属 コニベ belanger’s croaker 皮氏叫姑魚 沙蜮 Johnius grypotus (Johnius belengerii: unaccepted)
ニベ科 キグチ属 フウセイ large yellow croaker 大黄鱼 大王鱼,大鲜 Larimichthys crocea (synonym: Pseudosciaena crocea)
ニベ科 カンダリ属 メブトカンダリ 黑鳃梅童鱼 梅同 Collichthys niveatus

中国語のニベには姑という字が使われています。姑のようにうるさいとか、そういう意味があるんでしょうか?それとも、中国語では姑は「gū」と発音しますからその音を充てているんでしょうか。面白いですね。

情報量が多いので、表などでどこか間違っているかもしれません。見つけたら教えてください。

参考資料、出典

  1. BISMaL- ビスマル -(Biological Information System for Marine Life)

  2. ニベ

  3. シログチ

  4. キグチ

  5. コイチ