釣り用ライフジャケット(PFD)の選び方と法的着用義務
ライフジャケットを初めて購入する場合、分からないことだらけで色々と思案します。
素材別などでの性能は勿論のこと、法律に関しても疑問を抱く人は少なからずいるはず!ということで、ライフジャケットについて非法律家なりに調べるうちに分かったことを共有したいと思います。
- この記事の要点
- 船釣りをするなら国土交通省認定(桜マーク)のタイプAを買わなければならない(最悪タイプDでもいいけど)
- 磯渡し、沖堤防への渡船なら国土交通省認定(桜マーク)が無くてもOK
- ライフジャケットとPFDの違い
- 法律的に、釣り船でのライフジャケット着用義務はあるのか?
これらについてまとめます。
これさえ押さえておけば、あとは心置きなく好きなライフジャケットが選べるぜ!
もくじ
自己救命策の基本
海上保安庁の調査によると、2007年におけるライフジャケット未着用者の釣り人の死亡率は着用者の1.5倍ですが、2001年から2005年までの船舶等における全体の死亡率は5倍も差があります。
それから、意外と気にしていない人が多いのが連絡手段の確保です。
いくら落水時にライフジャケットで助かったとしても、助けを呼ぶ手段がなければ元も子もありません。
釣り仲間と複数人で釣りに行ったとしても、磯だと仲間が落ちても岩影で見えないことも考えられるので、やはり通信手段は必須です。
過去に私の知人の釣り仲間も磯釣りに出掛けて海に流されて亡くなっています。絶対に水難事故を侮ってはいけません。
- ライフジャケットの常時着用
- 防水パック入り携帯電話等、連絡手段の確保
-
海上保安庁への緊急通報用電話番号118
番の活用
釣り船でのライフジャケット着用は法的義務なのか?
これ、疑問に思う人がいるのでは?少なくとも私はそうだったんです。
結論から言えば、2018年(平成30年)2月1日以降は着用が義務化されました。しかも国土交通省認定(桜マーク)のAタイプでなければなりません。
以前は行政的にも着用に努めて下さいと言っていました。つまり言い換えると義務ではないが、出来れば着用した方が望ましいというスタンスでした。でも法的に義務化され、下記リンクでも内容が変更されています。
航行中の漁船に一人て乗船して漁ろうに従事している場合、ライフジャケットの着用 が義務となりました。
なので、渡船屋さんや釣り船は客に対して安全面からライフジャケット着用を義務付けます。また違反したら船長がキップを切られるため、以前よりも客に対して厳しい態度で望むようになったと思います。
持参してね、持ってないなら乗せないよ
持ってないなら貸しますよ(無料/有料)
対応の仕方は船長によって様々です。ちなみに、12歳未満の小児、水上オートバイ、1人乗り漁船で漁する場合には従来どおり着用義務があります。
条文を読み解く
上記の通り、本当に着用義務があるのか条文を確認してみました。興味ない人は読み飛ばして下さい。
ライフジャケット着用の指定と着用義務の是非については、船舶職員及び小型船舶操縦者法に記されています。要約すると、第二十三条の三十六第四項でこういう時は着せなさいとあり、船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則 第百三十七条条第一項一号から四号で具体的にこういう人に着せなさいとの記述があります。
ちなみに、船室内にいる場合は着用義務はありません。ただし釣りをする場合は甲板にいるのでライフジャケットは必要です。
- 第二十三条の三十六
4 小型船舶操縦者は、小型船舶に乗船している者が船外に転落するおそれがある場合として国土交通省令で定める場合には、船外への転落に備えるためにその者に救命胴衣を着用させることその他の国土交通省令で定める必要な措置を講じなければならない。
船舶職員及び小型船舶操縦者法
(昭和二十六年法律第百四十九号)
施行日: 平成二十八年四月一日
最終更新: 平成二十六年六月十三日公布(平成二十六年法律第六十九号)改正(執筆時の最終改正日)
- (船外への転落に備えた措置)
第百三十七条法第二十三条の三十六第四項の国土交通省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
- 一 航行中の特殊小型船舶に乗船している場合
- 二 十二歳未満の小児が航行中の小型船舶に乗船している場合
- 三 航行中の小型漁船に一人で乗船して漁ろうに従事している場合
- 四 前各号に定めるもののほか、小型船舶の暴露甲板に乗船している場合
船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則
(昭和二十六年十月十五日運輸省令第九十一号)
施行日: 平成三十年七月一日
最終更新: 平成三十年六月八日公布(平成三十年国土交通省令第四十六号)改正(執筆時の最終改正日)
A,D,F,Gの4種類のタイプと乗れる船
結論から言うと、船釣りで使うなら国土交通省認定(桜マーク有り)のタイプAが必要です。ただし、平水区域(大阪湾、東京湾などの全域)、沿岸区域(陸地から10 km以内)ならタイプDでもOKです。更に、磯渡し、沖堤防への渡船なら国土交通省認定じゃなくてもOKです。
水上バイクなど、用途や使用海域によっては違うタイプでもOKな場合もありますが、ここでは釣り用にフォーカスしています。
- あなたが着用するライフジャケットはどのタイプ?|国土交通省海事局
- 平水区域及び沿岸区域|日本小型船舶検査機構
ライフジャケットとPFDの違い
少し遠回りな話からしましょう。
救命胴衣は用途に応じて3種類に分類できます。
- a.小型船舶用救命胴衣
頭部を水面上に出し、リラックスして浮いていることができる。
- b.作業用救命衣
船上で作業する方のためのライフジャケットで、作業性を重視。
- c.小型船舶用浮力補助具/2002年10月(平成14年10月)導入
小型船舶用救命胴衣よりも要件を緩和し、着心地や機動性を重視。
更に、上記の用途別3種類とは別に、国土交通省に認定される4種類のタイプに区分することが出来ます。安全性に配慮しているほどグレードが上です。(Aが一番上のグレード)
- TYPE A
- TYPE D
- TYPE F
- TYPE G
3つの用途と4つのタイプの関係性を一覧にすると、概ね次のようになります。
用途 | タイプ | 色 | 反射材 | 笛 | 浮力 (kg) |
---|---|---|---|---|---|
a | A | 発見されやすい色 | 有 | 有 | 7.5以上 |
D | 有 | 有 | |||
b | F | ||||
c | G | 5.85以上 | |||
空欄は指定無し |
で、本題に入りますと、日本におけるライフジャケットとPFDは、堅苦しい話を抜きにすれば同じモノです。
しかし、厳密に定義するなら次のようになるかと思います。
- ライフジャケット
救命胴衣の意味。ライフベスト、フローティングベストとも言う。
もっぱら緊急時のための救命装備。上半身を全体的に覆ったり反射材が付いていたりと、水難時の体温維持や視認性を重視したもの。
使用時は着水しないことが前提、或いは一度きりの着水を前提とした救命胴衣。a.小型船舶用救命胴衣の意味合いが強い。- PFD
PFDとは、Personal Flotation Device の略称。直訳は救命胴衣でライフジャケットの1つに属するが、能力的にはb.作業用救命衣やc.小型船舶用浮力補助具の意味合いが強い。
身動きがとりやすいように敢えて浮力を落としたり、脇周りの浮力材を減らしてスッキリさせるなどして着心地や機動性を重視したもの。
カヌー、カヤック、ラフティング(川下り)、水上バイクなどのウォータースポーツに見られるような、着水の繰り返しを前提とした救命胴衣。
特にカヤックなど着水を前提にしたウォータースポーツをしている人は、無駄に浮力が大きいと逆に動きにくかったり体の自由が利かなくなるので、これらを明確に分けたがるようです。
- ライフジャケット(救命胴衣)のタイプ別分類|国土交通省海事局
しかし、国土交通省で法廷備品のライフジャケットとして認定されている浮力の強いもの(浮力7.5 kg以上)でも、PFDと銘打っている商品もあるので、厳密な境界線はないと言えます。
膨脹式と浮力材式のどちらを買うべきか、メリット・デメリット
魚釣りを目的としてライフジャケットを買う時にまず悩むのが、膨張式・浮力材式のどちらにするべきかという事です。
それぞれにメリット・デメリットがあります。
もし、釣り以外に使う予定がなく、沖・堤防・ボートなどのオープンフィールドのみの使用が前提なら膨脹式でも構いません。
しかし、釣り以外にも使うなら浮力材式にすべきです。その大きな理由は次の4点です。
- 膨張式は、いざという時に膨らむ・機能するという絶対的な保証がどこにもない
- 膨張式はボンベの交換で維持費が発生する
- 浮力材式なら比較的雑に扱える
- 浮力材式ならマリンレジャーにも使える、メンテナンスが楽、維持費が掛からない
膨脹式
- 膨脹式
折り畳んだ気室と炭酸ガス(二酸化炭素)のボンベがセットになった救命胴衣で、必要な時だけ救命衣気室にガスを注入して膨らませて浮力を生み出す方式。一度膨らませると、気室部分はガスを抜いて何度も使いまわせるが、ボンベはその都度 新品(2000円~3000円/1本)と交換する必要がある。
- 自動膨脹式
着水時、落水時に水を感知して自動的に膨らむ方式。
- 手動膨脹式
自分で紐を引っ張ることで膨らませる方式。
- メリット
- コンパクト
- 動きやすい
- オシャレ
- 夏は涼しい
- デメリット
- 1度膨脹したら別売りのボンベと取り替える必要があるので、維持費がかかる
- 経年劣化もあるので膨脹せずとも1年~2年で交換する必要がある
- 自動膨脹式は水洗いや雨などの水気に神経を使う
- 手動膨脹式の場合、もし気絶してたら膨脹させられない
- 浮力材タイプとは違い、着水時に水面で仰向けに浮きやすいので身動きがとりにくい
- 気室(膨張性浮袋)は傷に弱いので岩や貝などで破裂する恐れがあり、磯場では役に立たない
- 津波などの災害時も、漂流物でパンクするので役に立たない
- 国土交通省認定(桜マーク有り)の製品が少ない(特にベルト式はほぼ皆無)
浮力材式のメリット・デメリット
- 浮力材式
内部に発泡素材を詰め込んであるベスト型のライフジャケット。膨張式とは異なり、常に浮力効果を発揮する。
- メリット
- ポケットのある製品が多いので、防水パックに入れた携帯電話やペンチなどの小物が入れられる(落水時に携帯電話を持っているかどうかはとても重要)
- 釣り以外のマリンレジャーでも使えるので汎用性が高い
- 膨脹式とは違い、落水しても釣行を続行できる(季節や服装にもよるけど)
- 冬は防寒にも役立つ
- 磯渡し、沖堤防への用途なら国土交通省認定(桜マーク)無しでもライフジャケットとして認められてる
- デメリット
- ダサイ商品が多い
- 夏は暑いし蒸れる
- 嵩張る
- 動きにくい(シャクった時にグリップエンドが引っ掛かったりする)
つまり、買うならこれ
で、釣りで使うなら結局どれ買えばいいの?って話ですが、1つは膨脹式。市場をざっと調べたところ、国土交通省認定の証である桜マークの入った製品はほとんどありません。たとえば↓↓↓のとか。
ベスト型なら、膨張式でも桜マークが付いたType-Aのライフジャケットはいくつかあるんですけどね。それでもちょっと少ないですね。例えば↓↓↓のやつ。
っていうか、国土交通省の基準に適合したタイプAのライフジャケットってどれも1万円とか2万円以上するのがザラじゃないですか。高すぎません!?
でも磯渡し、沖堤防へ渡る釣りなら桜マークが無くてもOKです。
なぜなら、[3]磯等渡しの場合は、型式承認品(桜マーク付)に代えて、浮力を有する釣り専用の安全装具で代替可(ただし、小児を除く。)
だからです。
「釣り専用の安全装具」とは、発泡ウレタンなどの固形の浮力材を持つライフジャケットのことです。「釣り専用かどうかなんて誰が判断するんだよ!?」って話ですが、これ以上の詳細は国土交通省のページを漁っても見つけることは出来ませんでしたが、少なくとも釣具メーカー製のように、用途として「釣り」を掲げているのであればOKだということみたいですね。
- あなたが着用するライフジャケットはどのタイプ?|国土交通省海事局
- 平水区域及び沿岸区域|日本小型船舶検査機構
なので、磯渡し、沖堤防への渡船しか予定がないのなら下のやつみたいな、桜マークは付いてない浮力材式を買うのがお得と言えます。↓↓↓
また、よく行く渡船屋さんで「桜マーク無くてもいい?」って問い合わせたほうがより安心できますね。
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