ライン(釣り糸)の太さと強度に関するプロレベルのマニアックな話

2018/05/20

このページでは、生半可な釣り人では知らない釣り糸に関するあれこれを詳しく解説します。

釣り糸(Fishing Line)に関して、ナイロンフロロPEなど、釣り糸の素材に関わらず何気なくラインの太さ(号数)や強度(ポンド数)だけを見ている人は多いと思います。
しかし、その考えは改めた方がいいかもしれません。

私も最近まで知らなかった事も多く、勉強が足りないなぁと反省しています。(生半可)

釣り糸の強度一覧については別ページに移設したので、下記リンクを参照してください。

また、もっと初歩的な話で、釣り糸の種類やその違いと特徴については下の別記事を参照してみて下さい。初心者(ビギナーズアングラー)にも分かるように書いてみました。

2010年に制定された統一規格

昔から釣りをやっている人であれば、例えば3号なら、ナイロン3号よりフロロ3号の方が強いと勘違いしている人は意外と多いようです。

しかし実は、直線強度(引張強度)に限って言えば、全く同じ直径と断面積ならフロロよりナイロンの方が強いのです。えっ!?そうなの!?とビックリする人もいるのでは?

ということで、規格制定までの経緯も交えてラインの強度を紹介します。


以前、日本における釣り糸の標準直径はナイロンを基準に定められていたもののフロロの規格はなかったため、フロロの表記はメーカーの自主的な判断に委ねられてきました。
そのため、次のような経験があるはずです。

  • フロロにおいて、ナイロンと同じ号数なのにナイロンより明らかに太いと感じる
  • リールスプールの糸巻量の表示において、ナイロン3 lbs.100 mなのに、フロロ3 lbs. 95 mと書いてある

これは、次の理由からではないかと推測します。

引張強度だけ見ればナイロンよりフロロの方が弱いので、メーカーが自主的判断とやらでナイロンと同じ強度となるようにフロロの直径を若干太くしながらも、号数は同じ表記で販売してきたのだと。

真意はメーカーに聞いてみないと分かりませんけどね。
勿論全てのメーカーではなく、太さを統一したメーカーもあります。

そうして、実のところフロロの方が太いけども、同じ号数、同じ強度表示、変質しにくい、感度が良い、対磨耗性が高いなどの長所があることから、結果としてそれを知らない購入者は同じ号数ならフロロの方が強いと錯覚するわけです。

そして
社団法人日本釣用品工業会の釣糸部会において、に標準直径が定められ、ナイロンフロロの統一規格が制定されました。
また、にはPE糸の太さ標準規格も制定されています。(後述

しかし、フロロの強度をナイロンの強度に合わせる慣習は現在でも見られます。
メーカー側としては善意のつもりなんでしょうけど、この問題の根本的な解決策ではありません。

なぜアメリカ(海外製)のラインは太いのか

ポンド表記だけを見て、海外のラインが安い!買ってみよう!と思い、実際に購入して巻いてみたらめっちゃ太かった・・・という経験はありませんか?

日本とアメリカではそれぞれ採用している表示方式が異なるので、日本製と同じ感覚でアメリカ製のラインを買うとそのような不満を抱えることになります。

この問題について、海外製品は粗悪で、日本の技術力が凄いからだと勘違いする人がいます。(私です)
確かに、釣り糸に限らず素材に関する日本の技術力は凄いですが、これは根本的な要因ではありません。

では一体、何がどう違うのか。

ポンドテストラインとポンドクラスラインの違い、アメリカと日本

釣り糸のポンド表記には、ポンドテストラインポンドクラスラインという2つの方式がありますが、これを知らないととんでもないことになります。

ポンドテストライン

表示方法は様々ですが、概ね次のように表示されています。

  • PTL
  • TEST(lb)
  • lbT

表示された数値以下では絶対破断しないことを保証する。
アメリカで採用されている。

ポンドクラスライン
  • PCL
  • CLASS(lb)
  • lbC

国際ゲームフィッシュ協会(International Game Fish Association, IGFA)が定めたラインクラス(IGFA クラス)のことで、表示された強度以上で切れることを保証する。多くの日本のラインメーカーが採用している。

表示された数値以上では絶対破断することを保証する。

つまり同じ16 lbs.表記でも、lbClbTでは意味が異なります。

4号16 lbC

16 lbs.掛かれば100%ラインブレイクするよ。12 lbs.で切れるかもしれないけど。

4号16 lbT

16 lbs.を超えないと切れないよ。まぁ、20 lbs.なのか25 lbs.なのか、何ポンドで切れるかは分からないけどね。

例えば、次の2点ならどっちが強いか分かりますね?

  • サンライン(SUNLINE) BASS PROFESSIONAL マシンガンキャストは3号 12 lbs.lbC
  • サンヨーナイロン APPLOUD GT-R ULTRAは3号 12 lbs.lbT

また、アメリカ製品であるバークレイ社のの場合はこんな具合です。

  • トライリーンXT 12 lbT≒23 lbC
  • トライリーン ビッグゲーム 15 lbT≒23 lbC

なぜここまで差が出てしまうかと言うと・・・

  • 日本での10 lbs.というのは、10 lbs.で必ず切れる
  • これは平均すると、7~8 lbs.くらいで切れる
  • それ以下で切れる可能性もある(6 lbs.とか)
  • 絶対切れないと保証するなら5 lbs.と表記することになる

こうやって日本とアメリカでは1.5倍から2倍くらいの差が出るわけです。
なので、アメリカなどlbT表示の海外製のラインを買う場合は、日本で使っているラインの半分強くらいの強度表示を買えば丁度いいくらいになるはずです。

更に厳密に言うと、日本の表示にも以下の2種類の方式があり、気をつけたいポイントです。

最大強力
そのライン強度の過去最高記録(ベストスコア)に相当する。最大強度やMAX強力、MAX強度という表示の時もある。
平均強力

ラインの均質な製造には高度な技術を要するためどうしてもムラが生じる。その平均値。AVE強力、AVE強度。

平均強力で表示している商品も見かけますが、大抵の場合、日本では最大強力が表示されていると思います。
なぜなら、同じ直径であってもMAX強度で表示した方がより強そうに見えて売れるからです。
例えば次の2種類のラインがあったとしても、消費者全員が最大強度か平均強度かまでは気に留めないので、強そうに見える4 lbs.表示の方が売れるので、メーカーはそのように表示するでしょう。

  • 1号/3 lbs.(平均強度)/標準直径:0.165 mm(最大強度は4 lbs.
  • 1号/4 lbs.(最大強度)/標準直径:0.165 mm(でも実は平均強度が2 lbs.

また、そもそもどっちなのか表示していない商品すら有ったりして、表示義務は無いようです。
なのでMAX表示のみの場合、本当はどれくらい実力がある糸なのかは使ってみないと分からないところがあります。
日本の表示方式(ポンドクラス)なら、実際には表示強度の7割~8割くらいで切れると思っておいた方がいいです。

高額・高品質なラインの場合は両方表示している場合が多く、lbTlbCの差が小さいです。それだけ製造の精度が高いということ。
同じ直径で同じ強度表示なのに、ブランドによってあれは強いとかあれは信頼できると感じるのはそういう一面があるのかもしれません。

1デニールの直径は何 mm

デニールとは1本の繊維が9 kmあったときの重さを示すもので、厳密には繊維の重さを表す単位であり、繊維の太さを表す単位では無いのです。

男性にはあまり馴染みの無い単位ですがタイツやストッキングの表示に使われています。

デニールの数値が大きいほどストッキングが分厚いので、繊維の太さの単位だと誤解している女性は多いと思います。
まぁ、デニールが大きい=重い=必然的に太い繊維ということになるので、慣習としてデニールが太さの単位だと認識しても差し支えはありませんけどね。

そもそもの話、何故デニールという単位が使われているかというと、極細繊維の均質な太さの製造は非常に難しくムラが大きいので、製造した糸に対して何ミリの糸という規定が難しいために、抽象的なデニールが使われています。

1デニールの直径は何 mm、という疑問や考えをもつ人もいるかもしれませんが、それはこれらの経緯に逆行しているのでナンセンスです。
そもそも素材によって比重も異なりますし。

太い糸ほど単位断面積当たりの強度が弱い問題

別記事で説明の通り、号柄が上がってもそれに正比例した強度は得られません。
特にPEはその傾向が顕著に現れています。

一体なぜなのか。京大出身の親友に意見を仰いでみました。

彼は、変人が集う京大のなかでも京都大学理学研究科化学専攻修了という変態のなかの変態です。

しかも、素材開発をおこなう某一部上場企業勤務なので何か知っているかも知れない、と思ったんです。

それでやりとりした内容が以下になります。

私:どの素材においても、太さが上がるにつれて断面積に比例した強度が出ないのはなぜ?
京大:例えば建築物の柱の圧縮強度なら、建築規模によって二乗三乗の法則が働く、部材の自重が影響する、座屈や他部材の応力が影響を与えるから正比例の耐力が出ないのは分かるけど、糸って軽いし引張強度でしょ?

糸やフィルムなどの高分子は加熱・延伸によって結晶性・分子配向を制御することで物性を発現させるのが基本で、太さや厚みが増すと外側と内側の状態の乖離が起こりやすくなり、太さと強度が正比例しないというのは有り得る。

糸に関する知識はあまり無いが、フィルムに関しては実際にそういうことが起こる。きずの存在が強度を低めるなんてのがガラス繊維ではあるらしい。

ガラス繊維の太さと強度|かたちのココロ
http://subal-m45.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-37cf.html

私:なるほど。ナイロンフロロ等のモノフィラメントの糸ならその理屈は分かる。でもPEは極細の糸を編み、その細い糸を何本束ねるかで太さ変えているし、編み込み本数が多い=強いはずでは?
引張時の伸度が内側と外側で違い、断面の中でも荷重を大きく負担してるところがあるかもしれないとも考えたけどそんなに偏るかな?それくらい編み方で補正できるんじゃないの?

京大:加熱・延伸の件は糸・フィルムに共通する。特にフィルムの方が2次元なので顕著になるが、糸の種類によって発想が変わることはない。

君が言うように、極細であれば熱・延伸の履歴が糸内に分布しているとは考えづらい。

編み方の知識は持ち合わせていないが、太いものを均一に編むのは難しいのでは?どんなものでもスケールアップすると元の物性を発現しなかったりするし、ある程度以上の太さになると応力が集中してそこで破断する、というのは有り得るかもしれない。

とのことでした。人生、日々勉強ですね。

ラインメーカーは公正化に向けてデニール表示も併記すべき

日本では多くの人が号数やポンド表示のみを見てラインを購入しています。

しかしこれは改めるべき慣習であり、理想としては直径とデニールとポンド数、ポンドテストとポンドクラスの見分けなど、表示されている本来の意味を正確に理解した上で購入するべきです。

こういった内容が周知さえされていれば、海外製品を買って思ってたより太い!ムキー!買うんじゃなかった!なんて無駄なストレスを抱えることも減らせますし、正しい知識を持っていればライン選択の幅もより広がるんじゃないでしょうか。

そしてメーカー側にも、無知なユーザーを騙すようなことはせず、表示の公正化に努めて貰いたいものです。
特に、デニールはライン強度の本質を示す重要な指標なので、是非ラインパッケージ等に併記して頂きたいものです。

これは全くもって逆です。
デニールの表示が無いからユーザーに馴染みがないのであり、ユーザーにデニールの知識が浸透したら表示するというスタンスはメーカー側の怠慢で、誠実さを欠いています。デニール表記に莫大なコストがかかるなら別ですけど・・・かかりませんよね?

パッケージの裏に胡散臭い売り文句を長々と書くインクがあるなら、デニールを表記して欲しいですね。それがメーカー側としての誠意だと私は思います。
ちなみに、よつあみは以降 重さを併記しているそうです。


PE30号で一体何釣るんだよって感じですが、ジム曰く13 kg(28.6 lbs.)あればドラグを出さずにGTがランディング出来ると言っています。
下の動画で言及しています。

村田基・ブチ切れ!ブラックダイアモンドのパワー!!